魔天戦史
「あれが、あの方の御子息ですか?」
「あぁ。良く似ているとは思わないかい?」
「…そうですね…しかし、先程の夢の話…」
「あぁ。まさかとは思うが…」
「結界を張りましょうか?」
「…そうだね。一応頼むよ。」
「…分かりました…」
聖霊はうっすらと月明りに消えた。
「…おかしい…まだ彼の力は目覚めていないはず…まだ彼は『光翔剣』を手にしていないはずだが…」
学園長は空に輝く金色の月を見上げた。そして一人静かに森から出て行った。



勇翔はなるべく足音を立てない様に寮に戻って来た。
「…皆、寝てるよね…?」
「どこに行ってたんだ?こんな時間に…」
「!?」
見上げると二階から京介が勇翔を見ていた。「あ…き、京介さん…」「俺が気付かないとでも思ったのか?」
「…すいません…」
「…まぁ、なにも無かっただけいいがよ。」
「は、はい!」
「もう寝ろ。いいな?」「はい、すいません…お休みなさい。」
「あぁ。」
勇翔は自分の部屋に戻って行った。京介はそれ見てから外に出た。「…さぁ、もう良いだろう。出て来いよ。」
すると何処からか一人の男が降って来た。
「…まさかお気付きだったとは…中々に侮れませんねぇ…京介さん…」
「…神崎迅…ここ暫く俺を見てたのはお前だったのか…何故だ?」
「主の御命令でしてねぇ…しかし見つかっていては話になりませんねぇ…」
「ふん、良く動く口だな。わざわざ自分から気配を撒いておいて、良くもそんな口が聞けるな。」
「ふふ、何のことですかねえ…」
その時京介の近くにまた一人の、今度は女性が降って来た。
「…朱翅(あかばね)さん…」
女性は腰に差した刀に手をかけた。
「京介、こいつは私が預かるぞ。」
「…知り合いなんですか?」
「…こいつは、御館様を殺した男だ…!」
「御館様を…!?貴様ッ!?」
二人に睨まれても、神崎は動じない。むしろ楽しんでいる様だ。
「ふふ、そういえばそんなこともありましたねぇ。中々にあの方は御強かったですよ?」
「貴様…ッ!?」
朱翅は腰だめから刀を抜き放った。そのあまりの振りの速さに鎌いたちが生まれた。鎌いたちはまっすぐ走って神崎に届いた。しかし神崎は鎌いたちに切られる寸前で飛び上がってかわした。
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