【完】俺だけを愛して溺れろ。
しっかり目が合ったあたしは、金縛りに会ったみたいに立ち尽くす。
『何で……、』
その言葉に眉根を寄せた蒼空は、一歩また一歩とあたしに歩み寄り、ぐいっと腕を引っ張る。
そして、
「遅い、馬鹿」
まるで痛みを堪(こら)えるような低い声で囁いて、あたしを抱き締めた。
驚くほど冷たい蒼空のコート。
気になって仕方がないあたしは蒼空を見上げた。
『ねぇ、いつからここにいたの!?』
「少し、黙って」
『っ!?』