【完】俺だけを愛して溺れろ。



『(ち、近いっ!)』



じわりじわりと頬が赤くなるあたしは、口元を手で覆って俯く。



『……迅速かつ慎重につけて下さい』



そう蚊の鳴くような声で言えば、蒼空は噴き出すように笑った。



そして、耳朶に触れた蒼空の指先に大げさなほどビクッと震えてしまった。



「だから、動くなって。動けば上手くいかない」



眉間にシワを寄せて、悪戦苦闘している人みたいな表情を浮かべる。



大丈夫かな?と心配はしたが、すぐにポスト部分を通った感触がしたので、そのまま反対側も蒼空に委(ゆだ)ねることにした。


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