一緒に暮らそう
 新多のインフルエンザは治った。
 けれど、次の週末も彼には会えなかった。彼は電機メーカーの展示会のため東京へ出張し、それが土日までかかっていた。
 
 もう6月に入った。
 休日。紗恵は遠出をした。田舎から遊びに来た友達に会うために、大阪の梅田に行った。
 この界隈は近年開発が進んでいて、たくさんの新しい商業施設が建ち並んでいる。

 駅ビルのコーヒーショップで、彼女は友達と待ち合わせをした。幼なじみの芹菜だ。

 芹菜とは小学校と中学校が一緒で、高校は別々だったが、今でも仲良くしている。亡き祖母を除いて、紗恵が何でも話せる存在だ。
 彼女は中学校の時にグレてしまったが、高校は地元の実業高校に何とか入ることができた。10代の頃はもっぱら、不良仲間が運転する改造車に乗って峠の山道を走るという、田舎にありがちな青春時代を過ごしてきた。
 高校卒業と同時にその手の遊びは卒業し、しばらく町の工場で働いた後、二十歳の時に昔から付き合っていた元不良の彼氏と結婚した。今では3人の子持ちである。

 二人はどんな時も、良い時も悪い時も仲良くしていた。芹菜が不良グループに入って学校に迷惑を掛けていた時も、紗恵が都落ちして芳しくない噂を立てられた時も、二人の友情は変わらなかった。大人になってからは疎遠になったけれど、会えば昔のように心を開いて話ができる。
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