一緒に暮らそう
「で、あんたはその斉藤って人を頼ってこっちに移り住んだわけね」
 話を聞き終わると芹菜が口を開いた。
「うん。あの人ならなんか信頼できると思って」
「紗恵ってさ、昔から外に向いてる子だったよね。だから東京の専門学校にも行ったじゃん」
「まあね。でも、まさかこっちに来るなんて、誘われない限り思いもしなかったよ。あの町にいた時の私は、一人で飛び立つ勇気なんかなかったもん。斉藤さんがいたから来る気になったんだ」
「へえ。そんなにいい男なんだ、その人」
「いい男っていうか何ていうか、私が今までに会ったことのないタイプの人なの」
 紗恵は新多の育ちの良さや理知的なキャラクターを語った。
「そうなんだ。確かにそういう男、うちらの町じゃ珍しいよね。それになかなかの男前なんでしょ。あんたは昔から面食いだったよね。高校の時から付き合ってたあいつだって見てくれだけは良かったじゃん」
 芹菜は紗恵が高校時代から専門学校時代に付き合っていた彼氏のことに触れる。
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