一緒に暮らそう
「そんなのきれいごとだよ。あたし、うちらみたいな庶民の女がそんなエリートにまともに相手にされるなんて思わないよ。付き合うことはあっても結婚まではしてくれないでしょ。あたしの高校の同級生が地元のスナックで働いてるんだけど、客の町医者と付き合ってたのね。結構オッサンだったけど、その男の愛人にはなれても結婚まではいかなかった。紗恵、目を覚ましなよ。世の中って所詮そんなもんなんだよ。あたしはね、自分と同じタイプの男と結婚して良かったと思ってるよ。うちの旦那も二十歳までは走り屋やっててやんちゃしてたけど、今はトラック運転手として真面目に働いてるもん。子どもは可愛がってくれるしさ。だって、考えてみ。今だってあんたは自分に引け目を感じてる。彼と元カノが住んでるエリートの世界に気後れを感じてる。そんなんでこれからもずっと付き合ってくとしたら、お互いの世界のギャップに苦しむことになるよ。あんたを傷つけるつもりはないけど、あたしはあんたが心配だから、彼とのことをよく考えてほしいんだよ」
「芹菜……」
 これ以上反論しても、友人は聞く耳を持ってくれそうにない。
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