一緒に暮らそう
「あんまりその彼に期待しない方がいいんじゃないかな。あたしの直感が『その男はまずい』って言ってる。あんただってまだ一応若いんだし、見てくれだって歳以上に若く見えるんだし、他にいい人だって見つかるよ」
 芹菜がそこまで自分たちのことに反対するとは意外だった。彼女なら紗恵に数年ぶりに恋人ができたことを喜んでくれると思っていたのに。正直、がっかりした。
「どうしてあんたはいつもこう、レアな男ばっかし引き寄せるんだろうね。高校一のイケメンでろくでなしとか、土建屋のドラ息子とか。あたしはあんたには平凡な幸せをつかんでほしいと願ってるのにさ」
「私は今、十分に幸せだよ」
「だったら何であたしに相談するんだよ。彼に会えなくて寂しいってさ」
 そう言われると返す言葉がない。

 それから二人は話題を変えた。
 話はもっぱら芹菜の三人の子どものことに及んだ。学校行事の話、習い事の話、ママ友との付き合いの話。芹菜は夢中で話すのだけど、紗恵は相づちを打つだけでその話題を広げていくことができない。主婦の友人と独身の自分との間には、もはや共通の話題はあまりない。
 学校を出てから、いつの間にか長い時が経っていた。
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