一緒に暮らそう

「でも、その日は彼女に会うつもりなんだ」
「何言ってるのよ。垣内さんにならいつでも会えるでしょ！　ラザフォード先生は数年ぶりに来日されるのよ！　これを逃したら今度いつお会いできるかわからない方なのよ！」
　そんなことは新多自身もよくわかっている。

「翔子。一応言っておくが、俺がプライベートで、誰に会おうが何をしようが、お前には関係ないぞ。それこそ先生の講演を聞きにいくかどうかも俺自身が決めることだ」
「でも、私は良かれと思って言ってるのよ」
「この際だからはっきり言わせてもらう。俺の彼女に余計なことをするな。この前、紗恵がマンションに見舞いにきたのをお前は黙っていた。あの後、電話で彼女から聞いたぞ」
「ああ、あなたがインフルエンザにかかっていた時ね。あなた寝てたから言いそびれてしまったのよ」
「しらばっくれるな。俺の家に俺の客が来たんだ。お前に彼女を追い返す権利は
ない。もう金輪際、仕事がらみでも自宅には来ないでくれ」

　よりによって翔子が家に上がり込んでいる時に、紗恵と彼女がバッティングしてしまったとはタイミングが悪かった。後ろ暗いことは何もないが、ああいうことがあれば紗恵だって面白くないはずだ。

「ごめんなさい」
　翔子は目を伏せる。
「せっかくだけど、講演に行くにしてもお前とは同行しない。行くなら一人で行く。講演の情報ありがとう」
　新多はそう言い、早足で翔子の前から去っていった。