一緒に暮らそう
 新多は悩んだ。
 恋人に会いたいのはやまやまなのだけれど、翔子が指摘したことももっともなのだ。応用物理学の一研究者として、その道の権威と話す機会を得ることは大事なことだ。

 彼は紗恵に電話をかけ、事情を話した。母校でとても大事な用事があるから今週末は会えないと彼女に伝えた。彼女に事の次第を細かく話した。そしてデートはもう一週待ってほしいと頼んだ。
 そう言われてうなずかない紗恵ではない。彼女はいつも新多の事情を理解しようと努めてくれている。でも、電話越しに聞くその声は心なしか寂しそうだった。

 後ろ髪を引かれる思いで、その週末、新多は京都にある母校に向かった。
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