一緒に暮らそう
「東京の電力会社から町の発電所へ出向してきた妻子持ちの男と恋仲になって、駆け落ちするって言い出して。子どもまでできて職場にいられなくなっちまった。後で迎えにくるつもりで、二人は紗恵を置いたまま駆け落ちしたんだ。でも結局、男は女房に連れ戻されて、律子は男に捨てられたんだよ」
「律子もまったくとんでもない男に引っ掛かったもんだね」
 別のおばさんが憤慨する。

「うちの人が一度だけその男に会ったことがあるって言ってたよ。発電所が現場だった時にその人としゃべったんだってさ。東京本社から出向してきた慶応出のエリート社員だったって。涼しげな目をしたなかなかの二枚目で、あの当時で30過ぎぐらいだったそうだよ。律子とは一回り違うね。2,3年で東京に帰る予定だったみたい。まあ、田舎にはいないタイプだったから、世間知らずの律子がコロッとまいっちゃったんだろうね」
 そのおばさんの夫は山林で土木作業員をしていた。
「姉ちゃんはどこでその男と出会ったんだよ。同じ市内に住んでたっていっても、職場が違っただろ」
 叔父がたずねる。
「さあね。男女の縁は摩訶不思議なのさ」
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