一緒に暮らそう
紗恵は目を凝らして、隙間の向こうの世界を見た。
大人たちは祖母の卓袱台を囲んでいる。おばさんたちは団扇をあおいでいる。祖母の小さな背中が見える。
蚊取り線香の臭いが、戸の隙間を通り抜けて廊下にまで漂ってきた。
「姉ちゃんもつくづくバカだよな。田舎に帰れなくなっちまったから、東京で水商売するしかなくなったんじゃないか。俺、恥ずかしくて仕事場の人たちにはきょうだいがいるなんて言えねえよ」
「日出夫、いい加減にしなさい」
祖母が再び叔父をたしなめる。
「今では律子も落ち着いたんだよ。あの子は何年か前に結婚した」
祖母が打ち明ける。
「何だって。姉ちゃん、結婚してたの? 誰と」
「詳しいことはわからないよ。相手はたぶん店の客だろう。今は東京郊外の町に住んでるみたいだね」
「何で教えてくれなかったんだよ」
「あたしだってそのことは最近知ったんだよ」
「姉ちゃんが母さんの所に連絡をよこしてきたのか」
「そうだよ。二週間ほど前、うちに電話をかけてきた。あの子はたまに、用事のある時だけ電話をかけてくるのさ」
「水くさいな。所帯を持ったなら教えてくれてもいいのに。俺たちは実の家族だろ」
大人たちは祖母の卓袱台を囲んでいる。おばさんたちは団扇をあおいでいる。祖母の小さな背中が見える。
蚊取り線香の臭いが、戸の隙間を通り抜けて廊下にまで漂ってきた。
「姉ちゃんもつくづくバカだよな。田舎に帰れなくなっちまったから、東京で水商売するしかなくなったんじゃないか。俺、恥ずかしくて仕事場の人たちにはきょうだいがいるなんて言えねえよ」
「日出夫、いい加減にしなさい」
祖母が再び叔父をたしなめる。
「今では律子も落ち着いたんだよ。あの子は何年か前に結婚した」
祖母が打ち明ける。
「何だって。姉ちゃん、結婚してたの? 誰と」
「詳しいことはわからないよ。相手はたぶん店の客だろう。今は東京郊外の町に住んでるみたいだね」
「何で教えてくれなかったんだよ」
「あたしだってそのことは最近知ったんだよ」
「姉ちゃんが母さんの所に連絡をよこしてきたのか」
「そうだよ。二週間ほど前、うちに電話をかけてきた。あの子はたまに、用事のある時だけ電話をかけてくるのさ」
「水くさいな。所帯を持ったなら教えてくれてもいいのに。俺たちは実の家族だろ」