一緒に暮らそう
 二年間の修士課程はあっという間に終わる。
 奇しくも二人は同じ企業の同じ職種に就職する。別に新多に合わせて職探しをしたわけではない。自分の専門と興味を追っていたら、自然にそうなっただけだ。
 だが、初任の場所は違っていた。翔子はそれぞれの勤務地に分かれて暮らしていても、遠距離恋愛を続けていくつもりだった。しかし、初任者研修に忙殺されているうちに、二人は次第に疎遠になっていった。どちらかが別れを切り出したわけではなかったが、二人の関係は自然に消滅した。

 それから翔子は新しい男性に恋をした。
 彼は職場の先輩で、彼女に仕事を教えてくれた。とても頼もしく思えた。
 翔子が彼にアプローチするのに時間はさほどかからなかった。彼も彼女に言い寄られてまんざらでもなかったから、二人は交際を始めた。交際は数年の長きに渡り、彼女にとっては人生で最も盛り上がった恋だった。
 だが、先輩は郷里にいる年上の恋人と切れずにいた。若い翔子に惹かれつつも、結婚願望の強い三十路の女に押し切られ、彼はその彼女と結婚してしまった。
 それが青春の苦い思い出だ。
< 136 / 203 >

この作品をシェア

pagetop