一緒に暮らそう
 そんな辛い恋愛を引きずりながらも、前を向いて進んでいこうとしていた時に再会したのが、元彼の新多だ。

 彼は数年前、翔子が在籍している神戸研究所に出張で来たことがある。
社会経験を経た彼は一回りも二回りも大人の男に成長していた。地方の研究所で 三十代前半にして一研究班の主任を任されているらしい。
 運命の再会だと思った。
 翔子は新多を地元のレストランに誘い、お互いの再会を祝った。聞けば、彼もまだ独身だという。それに特定の交際相手もいないという。

 翔子の心の中でベルが鳴った。彼女だってもう三十を越えた。仕事だって軌道に乗っているし、そろそろ良い相手を見つけて結婚がしたい。新多と元のさやにもどりたいという気持ちがむくむくと湧き上がってきた。
 昔のなじみと同じ企業に勤めているよしみで、翔子は彼と時折メールのやり取りをするようになった。それとなく彼の気持ちを刺激して、神戸の研究所へ異動を希望するように助言した。彼がその気になると、彼女もその後押しをすべく人事にはたらきかけた。
 そして新多はめでたく現在の研究所に栄転してくる運びとなった。
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