一緒に暮らそう
「おい、何をぼけっとしとるんだ」
叔父の声に紗恵は引き戻された。
「まったく三十になる女なら結婚していてもおかしくはないが、お前じゃあな。嫁のもらい手があるかどうか。なあ、キャバレーで金持ちの男をパトロンにしていたという話は本当か。町の連中がお前のことを悪しざまに言っているぞ」
叔父は相手の癇に障ることをズケズケ言う人だ。中高年の世代らしく、クラブのことを「キャバレー」と呼ぶ。
「いいえ、そんなこと!」
クラブに来店していた客がたまたま同郷だったために、紗恵は地元で東京での生活をばらされてしまった。しかも、紗恵に言い寄ってきたその男を袖にしたばかりに、逆恨みをした彼に根も葉もない噂を広められてしまった。
「でも、キャバレーで働いていたのは本当のことだろう」
紗恵は静かにうなずく。
「ほらな。やっぱり母親が母親なら娘も娘だ。同じ穴の貉だよ。まったく身内として恥ずかしいったらありゃしない。水商売をしてたなら、堅気の人間の色々と勘ぐられたってしょうがないじゃないか」
自分のことを悪く言われるのは我慢できる。自分を捨てた母親がそう言われても平気だ。大好きな祖母のことを言われないかぎり大丈夫だ。
「お話はそれだけですか」
「ああ。今月はとりあえずその賃料でいくよ。でも来月以降はどうなるかわからないよ」
そう言って叔父は店を去っていった。
叔父の声に紗恵は引き戻された。
「まったく三十になる女なら結婚していてもおかしくはないが、お前じゃあな。嫁のもらい手があるかどうか。なあ、キャバレーで金持ちの男をパトロンにしていたという話は本当か。町の連中がお前のことを悪しざまに言っているぞ」
叔父は相手の癇に障ることをズケズケ言う人だ。中高年の世代らしく、クラブのことを「キャバレー」と呼ぶ。
「いいえ、そんなこと!」
クラブに来店していた客がたまたま同郷だったために、紗恵は地元で東京での生活をばらされてしまった。しかも、紗恵に言い寄ってきたその男を袖にしたばかりに、逆恨みをした彼に根も葉もない噂を広められてしまった。
「でも、キャバレーで働いていたのは本当のことだろう」
紗恵は静かにうなずく。
「ほらな。やっぱり母親が母親なら娘も娘だ。同じ穴の貉だよ。まったく身内として恥ずかしいったらありゃしない。水商売をしてたなら、堅気の人間の色々と勘ぐられたってしょうがないじゃないか」
自分のことを悪く言われるのは我慢できる。自分を捨てた母親がそう言われても平気だ。大好きな祖母のことを言われないかぎり大丈夫だ。
「お話はそれだけですか」
「ああ。今月はとりあえずその賃料でいくよ。でも来月以降はどうなるかわからないよ」
そう言って叔父は店を去っていった。