一緒に暮らそう
　これはなんとかしなければならない。
　こんなことを言ったらまた怒られるかもしれないけど、彼女の性格上、言いたいことは言わずにはいられない。元彼の目を覚まさせないといけない！

「ねえ、アラタ。こんなことを言うのは心苦しいんだけど」
「え？　何」
「私、噂を聞いたんだ」
「噂？　何の？」
「あのね。あなたが前にいた研究所のね、三上さんって人いたでしょ」
「ああ、三上ね。知ってるも何も、彼は俺の研究班にいた奴だよ」
　新多の顔が明るくなる。
「私、この前東京本社に出張に行った時、彼もそこに来てたのよ」
　実際は三上にはメールで連絡をとったので、この部分は翔子の創作である。
「ああ、そうだったの。あいつ、元気だった？」
「ええ。元気よ。相変わらず仕事が忙しいみたい」
「そうか。懐かしいな」
「私、うちの研究所に来たあなたのことを彼に話したのよ。元気そうにやってますよって。彼、色々話してくれたわ。あなたのことも、あの町のことも」
「へえ。そうだったんだ」
「彼、垣内さんのことも話してた」
「紗恵のことも？」
「うん。あなたがある惣菜屋によく通うようになったんだけど、そこは芳しくない噂のある若い女が切り盛りする店だったそうよ」
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