一緒に暮らそう
「ねえ、斉藤さん。斉藤さんが子どもの頃ってどんな子だったの?」
 ふいに紗恵がたずねる。
「うん? 俺の子どもの頃?」
 彼が涼やかな片目をこちらに向ける。どきっとする視線だ。
「ええ」
「うーん。俺は……大人しい子だったよ。自分で言うのもなんだけど、大人しく本を読んで宿題をしてるような手のかからない子だった。三人兄弟の真ん中でね。兄貴や弟の方がよっぽど元気だったな」
 彼が三人兄弟の二人目だとは聞いていた。でも、彼の家族のことはあまり知らない。
「兄貴はいかにも長男らしく威張ってて、弟ども仕切ってる兄貴だった。親の稼業を継ぐのも長男らしいよな」
「お父さんとお兄さんは何をしてらっしゃるの?」
「会計士。親父は千葉で事務所を開いてて、資格を取った兄貴がそこに入ったんだ。駆け出しの頃はよその会計事務所で修行してたけどな。女房と子どもが二人いる」
「ふうん」
 予想していたとおり彼の家は堅い家だった。
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