一緒に暮らそう
「斉藤さんて古屋さんと大学の同級生なんですよね」
　しばらくして年下の同僚がたずねてくる。
「ああ。京都の大学で同じ研究室にいた」
「学生時代の古屋さんってどんな人だったんですかぁ」
「どんな人って言われてもなぁ。今と変わらないよ。真面目に研究に取り組んでいたと思うよ」
「古屋さん」
　今度は向こう側に座っている翔子にたずねる。
「古屋さんて斉藤さんと同じ大学に通ってたんですよね。学生時代の斉藤さんってどんな感じだったんですかぁ」
　そんなこと訊いてどうするんだと内心新多は考えていた。
「学生時代の斉藤さん？」
　彼女は公の場では新多のことを苗字で呼ぶようにしている。
「勉強熱心な学生だったわよ。教授からも気に入られていたから、修士課程を終える時に博士に行かないかって誘われてたわ」
「へえ。やっぱ、斉藤さんって学生の頃から研究で頭角を現していたんですねぇ」
「そうよ。彼はあの頃から努力家で秀才だったんだから」
「おいおい。あんまり大げさな話はしないでくれよ」
　新多が会話に口を挟む。
「斉藤さんって女の子にもモテたんじゃないですか。結構イケメンじゃないですか」
　同僚がまたいらないことをたずねてくる。
「そうね。学科に女子学生はさほど多くなかったけど、斉藤さんのこと気にしてた子は何人かいたわよ。よその女子大の学生にも告白されていたしね。そりゃあ、モテてたわよ」
「おいおい、話を盛るのはやめてくれ」
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