一緒に暮らそう
「斉藤さんって今もすごくかっこいいっすよね。仕事もできるし、男の俺でも憧れちゃいますよ。古屋さんだって斉藤さんのこといいなって思うでしょう?」
「え、ええ。そうね。とても仕事熱心な人だし、人柄も良い人だと思っているわよ」
 翔子は当たり障りのない返答をする。
「ぶっちゃけ斉藤さんと付き合っちゃわないんですか。俺、お二人は結構お似合いなカップルになると思うんですけど。お二人とも独身でしょ」
「あの……」
 思いもかけない言葉だった。
「あ、あたしも同感です。斉藤さんと古屋さんって、できる男とキャリアウーマンで絵になりますよね」
 横から女子社員が言ってくる。

 翔子が横目で新多を見ると、彼は目を伏せたまま枝豆を食べている。二人が過去に付き合っていたことは、もちろん社内では内緒にしている。
「そうは言っても、斉藤さんには斉藤さんの気持ちってものがあるし……」
 翔子は、紗恵の存在をこの場で口にしていいものなのか考えあぐねた。
「ねえ、斉藤さんだって古屋さんのこと素敵な人だと思いますよね」
 馴れ馴れしい同僚の質問に新多は何も返さない。
 この人はこういう話が人一倍苦手なのだということを翔子はわかっている。
「悪いけど、そういう話は勘弁してほしいんだ」
 新多は目を伏せたまま静かに言う。
 この人には当たり障りのないことを言ってお茶を濁すということができない。翔子は彼のそういう不器用なところが好きなのだけれども。
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