一緒に暮らそう
「アラタ。傘、ありがとう」
 翔子の言葉に新多が軽くうなずく。
「でも、お願い。これからはもう私に親切にするのはやめて。そうじゃないと私、ますますあなたのこと好きになっちゃうから」

 新多の表情が変わる。
 翔子が差している傘に降り注ぐ、雨のボツボツという音が聞こえる。

「翔子……」
 新多の額から雨だれが流れ落ちている。
「ごめん。お休み」

 新多は踵を返した。そして彼はあっという間に暗い人ごみの中に消えてしまった。
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