一緒に暮らそう
 二人は神戸からJRで京都に行った。

 最初に向かったのは賀茂御祖神社、通称下鴨神社。
 住宅地の中を進むと、突如として鬱蒼とした森が姿を現す。境内に至るまでの深い森は「糺の森」と呼ばれ、実に良い空気に満ちている。頭上からは、木々の梢の間から木漏れ日が差し、地面に金色の模様を描いている。その森を抜けるだけでも心身が浄化されそうだ。新多によると、毎年お盆にこの森の中で古書市が開かれるらしい。

 朱塗りの楼門を抜けると、一気に視界が開けて境内が広がった。暗い森を抜けてきたので、空が殊更青く見える。
 社務所には、色とりどりの可愛いお守りが売っていた。女性用のお守りを多く扱っているので、よその神社で売っているものよりもデザインが凝っている。小さくて丸く、花の刺繍があしらわれている。紗恵が夢中でお守りを物色している様子を、新多が目を細めて眺めている。紗恵は健康祈願のお守りを買った。
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