一緒に暮らそう
 下鴨神社の次は、そこからほど近い場所にある新多の母校に向かった。

 交差点の角に、大学特有の立て看板が並んでいる。そこには紗恵にはよく意味の分からない文句が書かれている。今の時代にも学生運動をする学生がいるのだろうか。

 二人は銀杏並木のメインストリートを歩いた。銀杏が黄金色に色づくにはまだ早い季節だったが、それでもきれいだった。

「大学って広いとこなんだね」
 紗恵がコメントする。
「まあ、こんな所見ても何も面白くないけど、さっき行った下鴨神社から近いから一応寄ってみたんだ。私大と違って国立大は味もそっけもない建物が多いから、見ていてもつまらないと思うけど」
 新多が言う。
「そんなことないよ。私はうれしいな。斉藤さんがこういう場所で学生生活を送っていたんだっていうのがわかるもの」
「そう言ってくれるとうれしいよ。でも、これから行く百周年時計台記念館はちょっと見応えあるかな」
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