一緒に暮らそう
 大学を出た後、二人は京都の観光地をいくつか回った。それから、夜は四条烏丸にある割烹で夕食をとった。間口の狭い、鰻の寝床のような京都ならではの料理屋だった。せっかく京都に来たのだからと、新多が京都らしい雰囲気のある店に連れてきてくれたのだ。
 今夜は河原町のホテルに一泊し、翌日帰る予定だ。

 夕食を終えた二人は、四条通りを祇園方面に進み、鴨川に架かる四条大橋の所にたどり着いた。夜の8時を回っているというのに大通りは喧騒に満ち、店のネオンがまぶしい。

 二人は橋のたもとにある階段を降り、鴨川の河原に出た。川の岸辺にもたくさんの人が座っている。カップルが多い。大学生と思しき若者たちの集団が、車座になってなにやら騒いでいる。

 二人は鴨川を三条方面に向かってそぞろ歩いた。頭上を見上げると、飲食店から張り出した川床で客たちが歓談している。昨年まで二人が住んでいた町では考えられないにぎわいだ。
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