一緒に暮らそう

「よお、紗恵ちゃん。今日もご苦労さん」
「中山さん、こんにちは」
「ここんところ寒なってきたな」
「ええ。中山さんは風邪などひかれてないですか」
「僕は元気やで。アホは風邪ひかんゆうさかいにな。紗恵ちゃんは？」
「お陰様で私は元気です」
　紗恵がほほ笑んで言う。
「あんた、ここんとこますます機嫌ようなってきてるやんか。またええことあったんやな」
「わかります？　中山さんは何でもお見通しですものね」
「そうや。あんたは気持ちがすぐ顔に出るさかいにな。ほな、また彼氏に何かもろうたんか」
「それは秘密です」
　結婚するとなるとこのホームを退職することになるので、そのことはまだ話せなかった。
「ほうか。今回は話せへんのか。まあ、ええわ。僕かてあんたのプライベートを全部ほじくり返す気はないし。ところであんたちょっと僕に付き合うてくれへんか」
「いいですよ。もう作業は終わりますし」
「神戸でエッグタルトを買うてきてん。おやつに食べへんか」
「わぁ。うれしいですね。中山さん、週末に神戸へ帰られたんですか」
　中山さんは神戸の出身である。
「せや。久しぶりに故郷へ帰って、古い知り合いに会うてきてん」
「それは良かったですね」