一緒に暮らそう
 紗恵は中山さんと一緒にホームの談話ルームに入った。

「せっかくですから紅茶と一緒に食べましょう」
 そう言って紗恵は二つのマグカップにティーバッグを入れ、ポットのお湯を注いだ。
「エッグタルトなんか久しぶりですね。好物なんですよ」
 エッグタルトなんて紗恵の住んでいた田舎ではとんとお見掛けしなくなった代物だった。
「この洋菓子店のエッグタルトは一味違うで」
 中山さんは紙箱の中から黄金色のタルトを取り出す。彼に勧められるまま、紗恵はタルトを一切れ口に運ぶ。
「おいしい。カスタードにコクがありますね」
「気に入ってくれてうれしいな。ところで紗恵ちゃん。今日あんたをここへ連れてきたのは土産を分けるためだけやない。あんたに話があるねん」
「ああ。そういえばこの前、いいお話があるっておっしゃっていましたよね」
「せや。僕の話したことを覚えていてくれはったんやな」
「もちろんです。あの時はまだお話しできないとのことでしたけど、期待して待っているように言われましたからね」
「ほうか。それは教えがいがあるというもんや。あの時はまだ知り合いと話し合いを進めている途中で、はっきりとしたことはまだわからへんかったんや。今やっと話せる段階になったというわけや」
 そして中山さんはたずねる。
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