一緒に暮らそう
 それから、仕事も納めも近づいた年の瀬のある日、新多は同僚の古屋翔子にランチに誘われた。彼女彼と二人きりになるのは数か月ぶりだ。新多はすでに職場に結婚の予定を話していたので、翔子もその事実をすでに知っていた。

 新多が神戸に転勤して以来、二人は以前に一回だけ一緒に昼食をとったことがあるが、その時は翔子が新多の新しい彼女を批判したため、その場の空気は気まずいものになってしまった。そして、夏の飲み会で翔子が彼に自らの思いを吐露して以来、彼女は彼との間に距離を置いていた。

 翔子は新多を研究所の近くのイタリアンレストランに誘った。ラーメン屋や牛丼屋に行くのもたまにはいいかもしれないが、そのような店では旧友とゆっくり話ができない。

 新多は彼女に連れられて、小洒落たイタリアンの店に初めて入った。こんな店があったなんて今まで知らなかった。彼がいつも食べているランチよりも少々値段が張るが、ランチメニューの料金はそんなに悪くはない。

 二人は共にパスタランチを注文した。
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