一緒に暮らそう
　改造車の中から、マフラーで顔を覆った数名の若者が、金属バットを持って降りてきた。

「そらー、やっちまえー！」

　紗恵は恐怖で身がすくんだ。
　男たちは駆け寄ってくると、店のガラス戸に金属バットを振り下ろした。ガラスの砕け散る音が、冬の空気に響き渡る。

「やめてー！」
　紗恵は思わず店から飛び出した。

　男たちは店の軽自動車のフロントガラスまでたたき割った。
「あんたたち、そんなことしてタダで済むと思ってんの！　警察を呼ぶから！」
　エプロン姿の紗恵が白い息をはずませながら、男たちを制止しようとする。

　すると、男の一人が逆に紗恵に襲い掛かり、羽交い絞めにした。
「ハハハ。止められるもんなら止めてみろ！　こんなしょぼい店やめちゃえっつーの！」
「きゃー！　やめてー！」
　男は紗恵を抱きすくめてくる。
　紗恵の全身から血の気が引いた。
　
　彼女の叫び声は降りしきる雪の音にかき消された。
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