一緒に暮らそう
「はい。でも正直言うと、子どもを抱えながらフルタイムで調理の仕事をするのは大変だと思うんですよ。だから、子どもが保育園に行くようになったら、アルバイトとして復帰するかもしれませんね。オーナーには申し訳ないけど、新しい常勤スタッフを探していただくようにお願いしました」
「ほうか。まあ、子どもができたんならしゃあないな。あんたかて、一人だけやのうて二人、三人と子どもができるかもしれへんしなぁ。確かに一般企業のOLとちごて、主婦がフルタイムの調理師を続けるのは難しいなぁ」
「ええ、子どもももっと欲しいですよね。一人っ子じゃかわいそうだし。今、主人と二人で話しているんですけどね。将来郊外に家を建てて、その一階部分を店舗にしてカフェを開こうって計画を練ってるんですよ。そうしたら、子どもに目を配れる場所で仕事ができるじゃないですか」
「そうなん? あんたの旦那はんはほんまに女房思いのええ亭主やなぁ」
「ええ、本当に。私にはもったいない人です」
「僕はあんたの旦那はんがうらやましいで。あんたみたいな可愛い年下の女房がおったら、そら可愛いてならんわ」
 中山さんが得意の口説き文句を吐く。
「ほな、今夜はあんたのお腹の子の胎教になるように、ええ曲演奏せなあかんな」
「ええ。期待してます」
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