一緒に暮らそう
 リサイタルが始まると、中山さんはジャズとクラシックの名曲を次々と弾き始めた。カフェにはオーナーの他に中山さんと古くから付き合いのある年配の客が来ている。新多は紗恵の横で彼の演奏を聴いている。

「フライミー・トゥ・ザ・ムーン」、「A列車で行こう」、「マイ・ファニー・バレンタイン」、「枯れ葉」……。ドビュッシーの「月の光」、モーリス・ラヴェルの「水の戯れ」、ショパンの「別れの曲」……。そしてアンコールで演奏したのが、いつぞや彼が紗恵のためにホームの談話ルームで弾いてくれた「君が欲しい」だった。
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