一緒に暮らそう
「『いい』ってどういう意味ですか。まさか通報しないってことですか」
　彼が訝しげな表情で彼女をみる。
「はい、そうです。警察に言ったってどうせ無駄です」
「無駄なわけないでしょう。これは立派な犯罪行為ですよ。早く警察を呼んで逃げた奴らを探してもらわないと。あなたがしないなら僕が連絡します」

　彼は一通りの作業を終えると、携帯を取りに自分の四駆に戻ろうとした。

「前にもこういうことがあったんです」
　紗恵が続ける。
「何だって？　あなたは以前にもこんひどい目にあったのですか」
「ええ、その時はここまでひどくなかったけれど、店の戸にペンキをぶちまけられました」
「ケガは？」
　よもや恥ずかしい目にあわされたのではないかと思うと、彼の胸が騒ぐ。
「いいえ、その時は嫌がらせしか受けませんでした」
　その答えに彼は少しほっとする。

「その時は警察に連絡したけど、型通りの捜査をするポーズだけ見せて結局は何も探し出してはくれませんでした。私はしっかりあの人たちの人相や車種を報告したのに」
「そんな、まさか」

　警察が手抜きの捜査をすることなんてあるのだろうか。
「私にはわかってるんです。これは町の実力者の息子差し金でやられたことなんです。彼のバックは大きいから、警察もうかつに手は出せないみたいですね」
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