一緒に暮らそう
「あなたはそんな危ない奴につきまとわれてきたのですか」
 彼の質問に紗恵がだまってうなずく。
「だいたいあなたを追い掛け回している時点でストーカー犯罪でしょう」
 その男、本当どうにかならなかったのだろうか。おそらくそうなのだろう。彼女だって対処法を講じたことはあるはずだ。



「あなたがいいと言っても僕はこんなことは見過ごせません。携帯で通報します。警察には僕が事情を話します」
 彼はモッズコートのポケットから携帯を取り出した。

 深夜十時を回る頃、パトカーが店の前に停まった。
 警察の事情聴取を受ける彼の傍らで、紗恵も仕方なく質問に応じた。
 こんなことをしたって無駄なような気がする。
 
とにかく今は寒くて、早くアパートに帰りたい。
早くに床に就いて、眠って、すべてを忘れてしまいたい。
 事情聴取が早く終わればいいのにと紗恵は考えていた。



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