一緒に暮らそう
「今夜は送ります。あなたの車はあんな状態だし」
 彼が言った。
「え。でも。もう遅いですよ。こんなに長いこと付き合わせてしまったのに、これ以上付き合わせては申し訳ないです。タクシーを呼んで帰りますから」
「こんな夜にタクシーあるの?」
 彼がたずねる。
「あ。そういえば……」

 紗恵はタクシーなんてここ数年利用していない。でもよく考えたら、確かこの田舎町ではタクシー会社は深夜の営業をしていなかった。だからこそ、この町の住人はマイカーが必需品なのだ。

「こんな時に遠慮しないでくれ」
 そう言って彼は自分の大型四駆のキーを開けた。
 
紗恵は店のシャッターを下ろし、急いで彼の車に近づいた。
長身の彼が助手席のドアを開く。
人の車に乗せてもらうなんてすごく久しぶりだ。
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