一緒に暮らそう
 それからしばらく、紗恵と新多は普通の店員とお客の関係を続けていた。
 店は平常どおりの営業を再開し、それまでと変わらぬ日々が続いた。

 新多はそれまでのように閉店間際に店を訪れては、青菜と根菜の炒め物や揚げ物、おにぎりを買って帰っていく。
 彼が来ると紗恵はそれまで以上に愛想良く接客するが、二人が必要以上に言葉を交わすことはない。
 普段の彼らに戻ったにすぎない。

 三月に入ると、店の前の駐車場に積もっていた根雪も溶けてきた。

 いつものように閉店前、仕事帰りの新多がふたば屋の前に四駆を停めた時、彼はまたただならぬ気配を感じた。

 何か様子がおかしい。
 彼は訝しげに店に入口に近づく。

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