一緒に暮らそう
翔子が再び畳み掛けてくる。
「実際そうなんでしょ? あなたは彼を追いかけてこっちに引っ越してきたんでしょ」
「そう思われても構わないです」
動揺する心を抑えながら、紗恵が短く答える。
「私、そういうのイヤだわ」
翔子がショーメのピンキーリングをはめた右手で、その長い髪をかき分ける。
「え?」
「だって、主体性がないじゃない。彼氏を追っかけて、それまでやってた仕事もやめて引っ越すなんて」
「はぁ……」
実際はそういう次第ではなかったのだが、それを説明するのも億劫なので紗恵は何も言わなかった。
「私ね。マスターの学生の時にアラタと付き合っていたのよ。私の方から告白してね」
「マスターって?」
「大学院の修士課程のことよ。私たち大学の物理学研究科で同じ分野を専攻していたの」
彼女が指しているのは、新多が卒業した京都にある最高学府の大学院のことらしい。
「卒業後は同じ企業に研究職として就職したわ。でもそれはたまたまよ。初任の赴任先も別々だったし。それから私たちは疎遠になって付き合いは自然消滅しちゃったのよ。でもね、私、それでも彼氏を追ってキャリアをあきらめようなんて気持ちにはならなかったわ。女だからって恋愛を優先させるなんて、自分というものがない女のすることよ」
いかにもこの自信に満ち溢れた女ならそういう考え方をしそうだ。
「実際そうなんでしょ? あなたは彼を追いかけてこっちに引っ越してきたんでしょ」
「そう思われても構わないです」
動揺する心を抑えながら、紗恵が短く答える。
「私、そういうのイヤだわ」
翔子がショーメのピンキーリングをはめた右手で、その長い髪をかき分ける。
「え?」
「だって、主体性がないじゃない。彼氏を追っかけて、それまでやってた仕事もやめて引っ越すなんて」
「はぁ……」
実際はそういう次第ではなかったのだが、それを説明するのも億劫なので紗恵は何も言わなかった。
「私ね。マスターの学生の時にアラタと付き合っていたのよ。私の方から告白してね」
「マスターって?」
「大学院の修士課程のことよ。私たち大学の物理学研究科で同じ分野を専攻していたの」
彼女が指しているのは、新多が卒業した京都にある最高学府の大学院のことらしい。
「卒業後は同じ企業に研究職として就職したわ。でもそれはたまたまよ。初任の赴任先も別々だったし。それから私たちは疎遠になって付き合いは自然消滅しちゃったのよ。でもね、私、それでも彼氏を追ってキャリアをあきらめようなんて気持ちにはならなかったわ。女だからって恋愛を優先させるなんて、自分というものがない女のすることよ」
いかにもこの自信に満ち溢れた女ならそういう考え方をしそうだ。