一緒に暮らそう
「私、ちょっとあなたのこと調べさせてもらったわ」
「え？　私のこと？」
「ええ。彼の前任地の同僚に、あなたのことを訊いてみたのよ」
　翔子が思いがけないことを言い出す。そんなことまでするなんて、彼女はまだ新多に未練があるのだろうか。

「そうしたら、あなた、元キャバクラ嬢だって話じゃない！　びっくりしたわ！　しかもよろしくない噂がいっぱいあるし。それってアラタは知ってるの？」
「はい」
　紗恵は端的に答える。

「信じられないわ！　あの人はああいう朴念仁だけど、女には結構モテるのよ。わかるでしょ、なかなかのハンサムで、エリートだし。学生時代だって女子学生が彼のことで騒いでいたし、就職してからも派遣の事務職員たちが彼を狙っていたのよ。何で、よりによってあなたみたいな人に落ちるの？」
「……」
「彼、あなたのその若さとルックスにやられたのね。それに、あなた、料理を作るって話じゃない。彼の胃袋もつかんだんでしょうね。でも、あなたは彼には似合わない」
「それは余計なお世話です。あなたには関係ないでしょう」
　紗恵がきっぱりと言う。

　それでも強気の翔子はひるまなかった。
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