一緒に暮らそう
「何であなたがここに?」
 紗恵は思わずたずねた。
「しっ。アラタは今、眠っているわ」
 翔子は口の前で指を立てる。
「あなたこそ何で来たのよ。彼には来るなって言われてるんじゃないの?」
「そうですけど……心配で。とにかくお見舞いに来たので、お邪魔しますね」
 紗恵が玄関に入ろうとすると、翔子がそれを遮った。
「ちょっと、あなたはこの家に入らないでちょうだい」
「どういうことですか! あなたに指図される筋合いはありません! そこをどいてください!」
 紗恵が驚いて抗議する。
 それでもなお翔子は入口をふさごうとした。
「お願い。あなたは入らないで」
「は? 何を言っているんです? 私は彼の彼女です! 彼を見舞う権利があります!」
「あなた知らないのね。彼はここ数週間超多忙だったのよ。あなたと遊んでいる場合じゃなかったの。休日も仕事をしなきゃいけないし、学会論文の締め切りも迫っていたのよ。無理をしたせいで、季節外れのインフルエンザにかかってしまったの。そのせいで業務が滞ってしまったわ」
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