一緒に暮らそう
 そう言って翔子は「トイダ製作所 神戸研究所」と印字された茶封筒を、紗恵の目の前に提示する。
「これが、彼が今携わっているプロジェクトの資料よ。電話で話したら、彼、プロジェクトの進捗状況をすごく気にしていたわ。だからこれを渡しにきたの。渡したらすぐに帰るつもりよ。だって彼は私に対しても病気をうつしたくないと思っているもの」
「そうですか……」
「だからね、今日は引き取っていただきたいの。あなたに病気がうつったら、彼の心配事が増えるわ。どうか彼に心配をかけるようなことはしないで」
 そこまで言われては何も返す言葉がない。
「わかりました。ではせめてこれを彼に渡してもらえませんか。私からだと言ってください。フルーツとかが入っています」
 紗恵はレジ袋を翔子に渡した。
「わかったわ。渡しておくわ」
「ありがとうございます」
 紗恵は軽く頭を下げると、すばやくその場を後にした。

 紗恵は空しい気持ちで帰路についた。すぐそこに彼がいるのに、一目その顔を見たいのに、会うことができないなんて。
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