【完】君と流れ星を。
「樹はちょっと残って。話したいことがあるんだ」
マスターは笑顔だったけど、それには少し、有無を言わせないような響きがあった。
「ああ。じゃあ、紗奈は気をつけて帰れよ」
「はーい。ごちそうさまでした!」
何の話か気になったけど、気にしてないふりで店を出る。
坂道を下りながら、夕暮れの街を見ると赤い海に沈んだ古代遺跡みたいに見えた。
それは少しずつ影になり、1つ1つの境目が曖昧になる。
闇に追いかけられるような気がして、私は少し早足で寮まで戻った。