【完】君と流れ星を。
気がついた時には唇が温かかった。

それがキスだって気付くのにも、少しかかった。



風が吹いて私の髪が澤田くんの顔にかかる。

澤田くんの手は優しく頬に触れたままで、涙の通り道だけが冷たかった。



ゆっくり離された唇と手。

夕闇の中で私を見下ろす表情。


「……ごめん」


視線をそらして、つぶやくように言われた言葉。


私は言葉の意味もわからないまま、早足で立ち去る背中を見送った。
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