【完】君と流れ星を。
「――――この天の川をはさんで、こっちの明るい星がこと座のベガ、日本では織姫星と呼ばれている星で、もうお分かりだと思いますが、この星がわし座のアルタイル、彦星です。
それではここで、七夕の神話をお話しします――」
織姫と彦星にとって、天の川って遠くて会えないという物理的な障害にすぎなかった。
私と先生にとっての天の川は、時間の流れで、近くて遠い心の壁だ。
もし私が紗奈じゃなくてお母さん……梨紗だったら、あの日、私の気持ちに応えてくれた?
何の躊躇いもなく唇に触れてくれた?
首筋に蘇る温かな感触に、胸が締め付けられて溺れているみたいだった。
それは暗く、深い海の底で光も見えず、ただ溺れてくだけ。