☆ソラ☆
私は一瞬止まってしまい、ゆっくりと振り返った。

連はこちらに振り返ることもなく、私に背を向けたまま教室に入っていった。
小さい声だったけど、確かに連は呟いた。

“ありがとう”

私の横を通り過ぎる瞬間に。

このひと言で良かったんだ。
このひと言で通じるんだ。

連の言葉に私は涙を流した。
あの頃はどれだけ涙を流しても、苦しみまでは流れてはくれなかったのに、今やっと流れた気がした。

たったひと言で。

連が私に言ってくれた言葉は、私が連に伝えたかった言葉をシンプルにしていた。





楽しかったり、怒ったり、悩んだり、喜んだり、迷ったり、泣いたり...その繰り返しをこれからも続けていくだろう。
連と過ごした日々は幼くて、自信もなくて、素晴らしいといえる恋ではないかもしれない。

でも、私にとっては、その日々を愛おしく思う。

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