無口な彼のカタルシス
翌日の放課後。
わたしたちはいつものように、一緒に帰る。
と言っても、わたしは『彼』の数歩後ろをテクテクついて行くだけ。
傍から見たらきっと、
たまたま帰る方向が同じで、たまたま帰る時間が同じで、たまたま前後に並んで歩いているだけの、
赤の他人に映るだろうと思う。
それでもわたしは幸せだった。
『彼』の“口以上に物を言う背中”が大好きだった。眺めているだけで『彼』と会話しているような、そんな楽しい気持ちになる。
彼は一目見て不良だとわかる風貌。短めの学ランに、ダボパンを腰履き。喧嘩を売られることはしょっちゅうだった。
だからそんな時、わたしは他人のふりをする。そうしてくれと『彼』が縋るような瞳で願うから、わたしはそうするしかない。