無口な彼のカタルシス
コツリ、額と額がくっついた。それはどちらからという訳でもなく……。
キスの後にも、お互いにお互いの繋がりを求めた結果――なのかもしれない。
「お前さ、」
そうしたままで『彼』が口を開く。
「紙と書くもん、いつも持っとけよ」
普段より多くを喋る『彼』にほんの少し戸惑いながらも、すぐ傍にあった自分の鞄を探ってネームペンを取り出した。
小さな悪戯を突然に思い立ったわたし。
ネームペンのキャップを外して、『彼』の頬に書く真似をした。ほんの悪ふざけのつもりだった。
「顔はやめろ――」
わたしの手首を掴んで『彼』は当然のごとく拒否。けれど……。
「――俺が読めない」
顔がダメな理由は、わたしが想像したものとは違っていた。
またしても意地悪なことを思い付いてしまったわたしは、再び鞄の中を弄る。
そうして取り出したのは、折り畳み式の携帯用鏡。
キスの後にも、お互いにお互いの繋がりを求めた結果――なのかもしれない。
「お前さ、」
そうしたままで『彼』が口を開く。
「紙と書くもん、いつも持っとけよ」
普段より多くを喋る『彼』にほんの少し戸惑いながらも、すぐ傍にあった自分の鞄を探ってネームペンを取り出した。
小さな悪戯を突然に思い立ったわたし。
ネームペンのキャップを外して、『彼』の頬に書く真似をした。ほんの悪ふざけのつもりだった。
「顔はやめろ――」
わたしの手首を掴んで『彼』は当然のごとく拒否。けれど……。
「――俺が読めない」
顔がダメな理由は、わたしが想像したものとは違っていた。
またしても意地悪なことを思い付いてしまったわたしは、再び鞄の中を弄る。
そうして取り出したのは、折り畳み式の携帯用鏡。