鬼滅羅〈キメラ〉
第三章
青白い満月が、灰色の夜空に浮かぶ。
深夜0時の渋谷、裏通り。
「やっと、その気になったか」
とある廃ビルの中、20m四方ほどの殺風景な部屋。
ねずみ色をしたコンクリートの壁に、四角い穴を開けただけの窓。
氷水のような月明かりに照らされている、阿部と数人の部下たち。
彼らは、単身で乗り込んできた私に感服し、満足げであった。
「ここは、どこだか覚えてるよなぁ?お前が、桐山を殺った場所だ」
「ふん。来てやったんだから、文句たれんじゃないわよ」
バカども。
心中で悪態をつきながら、斜に構えて応酬する。
「お前は賢い女だ」
阿部が私に歩み寄ってきた。
10mほどの距離は、男の歩幅ならすぐだった。
彼は私の顎を、人差し指で持ち上げて、私の顔をまじまじと見つめ、美しいと呟いた。
そして、唇を私のそれへと重ねようとした。
そのとき。
私は、コートの袖に忍ばせていた短刀を、男の胸に突き立てた。
堅い手応えが、あった。
深夜0時の渋谷、裏通り。
「やっと、その気になったか」
とある廃ビルの中、20m四方ほどの殺風景な部屋。
ねずみ色をしたコンクリートの壁に、四角い穴を開けただけの窓。
氷水のような月明かりに照らされている、阿部と数人の部下たち。
彼らは、単身で乗り込んできた私に感服し、満足げであった。
「ここは、どこだか覚えてるよなぁ?お前が、桐山を殺った場所だ」
「ふん。来てやったんだから、文句たれんじゃないわよ」
バカども。
心中で悪態をつきながら、斜に構えて応酬する。
「お前は賢い女だ」
阿部が私に歩み寄ってきた。
10mほどの距離は、男の歩幅ならすぐだった。
彼は私の顎を、人差し指で持ち上げて、私の顔をまじまじと見つめ、美しいと呟いた。
そして、唇を私のそれへと重ねようとした。
そのとき。
私は、コートの袖に忍ばせていた短刀を、男の胸に突き立てた。
堅い手応えが、あった。