鬼滅羅〈キメラ〉
刃先が滑った。
刃を寝かせて、力いっぱい押し込んだつもりだった。
男は私の腕を叩き落とし、短刀を奪った。
「残念だったな。お見通しだよ」
そして、この状況でなお粛然と佇む私の頸動脈に刃をあてがい、お前の負けだ、と言った。
いいえ。
私は阿部を正面から睨み、はっ、と鼻で笑った。
「あんたの負けよ」
階下から響いてくる、男たちの怒号、
刃物のぶつかり合う音、発砲音、そして断末魔の叫び。
阿部は、慌てて出入り口のほうを窺いに行った。
部下の一人が、「もうすぐ防御を突破される」旨を伝えに来る。が、ほどなくしてその場にくずれた。
「貴様……!!」
男は地団太を踏んで、手にした刃物を床に叩きつけた。
「いったいどれだけの兵を借りた!?ありえねぇ……畜生め」
額に血管を浮き上がらせて、私に詰め寄って凄んだが、私は腰に片手をあてて、不敵に笑むだけである。
床からも壁からも、階下の惨劇が伝わってきていた。
それは、着々と近づいている。
「調子づきやがって。後悔させてやるぞ」
怒り狂った男が部下に指示を出すと、彼らは隣室から何かを連れてきた。
“それ”が目に飛びこんできた瞬間、私は身体中の血液が沸騰したかのような目眩をおぼえた。
怒涛のような憤怒。
「啓吾……」
刃を寝かせて、力いっぱい押し込んだつもりだった。
男は私の腕を叩き落とし、短刀を奪った。
「残念だったな。お見通しだよ」
そして、この状況でなお粛然と佇む私の頸動脈に刃をあてがい、お前の負けだ、と言った。
いいえ。
私は阿部を正面から睨み、はっ、と鼻で笑った。
「あんたの負けよ」
階下から響いてくる、男たちの怒号、
刃物のぶつかり合う音、発砲音、そして断末魔の叫び。
阿部は、慌てて出入り口のほうを窺いに行った。
部下の一人が、「もうすぐ防御を突破される」旨を伝えに来る。が、ほどなくしてその場にくずれた。
「貴様……!!」
男は地団太を踏んで、手にした刃物を床に叩きつけた。
「いったいどれだけの兵を借りた!?ありえねぇ……畜生め」
額に血管を浮き上がらせて、私に詰め寄って凄んだが、私は腰に片手をあてて、不敵に笑むだけである。
床からも壁からも、階下の惨劇が伝わってきていた。
それは、着々と近づいている。
「調子づきやがって。後悔させてやるぞ」
怒り狂った男が部下に指示を出すと、彼らは隣室から何かを連れてきた。
“それ”が目に飛びこんできた瞬間、私は身体中の血液が沸騰したかのような目眩をおぼえた。
怒涛のような憤怒。
「啓吾……」