鬼滅羅〈キメラ〉
少年はうなだれたまま後ろ手に縛られ、壁に寄りかかるようにして立っていたが、彼らが乱暴に突き放すと、そのままそこへ、崩れるようにして座りこんだ。
右こめかみから額にかけて大きく裂けていて、まだ流れ出る血液に、美しい黒髪が濡れている。
意識は混濁しているようだった。

私は動揺した。
この少年が、自分以外の人間によって束縛され、支配されているという現状に戦慄していた。
少年も、目の前のこの愚かしい男も、桐山も、彼を殺したという事実も、これまでの自分の経験すべてが、自分の存在から乖離していく。

「脱げ」

少年に銃口を向けたまま、阿部が私に指図した。

「俺が見ている前で、全部だ」

噛みしめた唇から、鉄の味がした。

誰が、誰があんたなんかの……!
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