鬼滅羅〈キメラ〉
からん。



冷えたコンクリートの上に、硬物の跳ねる音。

瞑っていた目をおそるおそる開くと、石膏のように硬直した喜兵衛が立っていた。
両目を剥き、だらしない半開きの口からは、赤い雫がしたたり落ちている。
下に視線を流すと、彼の脇腹には、短刀が深々とねじ込まれていた。

やがて喜兵衛は、白目を剥いて、後ろへ倒れこんだ。
熱い岩盤に放り捨てられた魚のように痙攣し、やがて乱れた呼吸が止まった。

もともと失血気味だったところへ、急所を突かれたのが致命傷となったようだった。

私は、茫然とした。



「啓吾……」



喜兵衛の躯体の横には、膝をつき、黒く染まった腹を押さえて体を折りまげた、啓吾がいた。
ゆっくりと倒れこむ彼の体を、私は抱きとめ、血だまりの中を壁際へ這った。

啓吾の脈は、最早それと感じられないほどに弱く、体温はどんどん下がっていく。

短く繰り返される呼吸の間隔が、次第に広がる。



ああ。
なぜ……!
< 18 / 20 >

この作品をシェア

pagetop