鬼滅羅〈キメラ〉
エピローグ
貴女だけを見ていた。
貴女の美しい瞳が、憎悪に燃えるのを。
哀しみに濡れるのを。
あるいは、絶望の淵に、沈みこむのを。
僕は知っていた。
貴女がそうする時、貴女の瞳には、僕だけが映っていた。
僕だけを見ていたのを。
貴女の胸に開いた深紅の薔薇。
そこから伝わってくる身体的な温もりと、それを介して精神が統合していく、遥かな昇華。
貴女の怒りと憎しみは、歪んだ愛情の裏返しだった。
僕にはそれが、心地よかったのだ。
今宵。
貴女は、僕の腕の中で息絶える。
僕とともに。
貴女は、僕のものだ。
誰にも、渡さない。
了