さよならは言わない~涙の離任式~【ショートストーリー】
私だけに見せる顔
先生が私の名前を覚えていてくれたことに自惚れそうになった。
先生は、私が最近よく一緒にいる友達の名前を覚えていなかった。
ただの『生徒』でいいなんて言いながら、変な期待をしてしまう。
「先生、私のこと狙ってたんでしょ~!」
最近の私はほぼ毎日生徒指導室へ顔を出す。
日課になっていた。
喜多先生の不機嫌な顔を
私の力でかわいい笑顔に変える瞬間が快感だった。
「先生、何イライラしてんの?甘いモノ不足じゃない?」
朝一で、眠そうな先生にこっそり…
常に鞄の中に入っているお気に入りのマンゴーの飴を渡す。
「こら!学校に食い物持ってくるなよ!これは没収!!」
先生は鞄の中に隠していたマンゴーの飴を袋ごと奪う。