さよならは言わない~涙の離任式~【ショートストーリー】
先生が私のひざに当たるか当たらないかくらいの距離を歩いた。
通り過ぎた先生が、振り向いたんだ。
唇をとがらせて、ふーっと息を吐いた。
きっとね
他の誰にもわかんないよ。
私にしかわからない。
喜多先生の息は
甘い香り。
マンゴーの香り。
私から没収したマンゴーの飴がいつの間にか先生のお気に入りになっていたんだ。
先生が通った後は、甘いマンゴーの香り。
怖そうな顔に似合わない甘党。