さよならは言わない~涙の離任式~【ショートストーリー】
先生の目
2年生になっても、喜多先生は生徒指導の先生だった。
先生とは授業で会うことはなく、
唯一の楽しみは試験の時の見張り。
1年の頃、一度だけ喜多先生が私の部屋の試験の監視役だった。
難しい顔してね…本なんて読んだりしてて。
全然監視していないんだ。
それなのにね、目がいくつあるんだろうって思うくらいに
素早く、怪しい動きをした生徒を注意した。
喜多先生はすごい。
私は試験をなるべく早く終わらせて、先生を見ていた。
気付いていないフリをしているけど、きっと先生は私の視線に気付いているんだ。
だって…
目がたくさんあるんだもんね、喜多先生は。